雲南白茶の新しい分類!2021年11月から新標準スタート

こんにちは、中国茶ライフスタイル文化協会代表理事のゆえじです。

今回ご紹介するテーマは「雲南白茶の新たな分類」です。

『雲南大葉種白茶』が標準化された!

みなさん「月光白」というお茶はご存知でしょうか?
雲南省を代表する白茶の一種なのですが、なんとなく曖昧な印象はありませんでしたか?

画像4

一時期は普洱茶の一種だと言われていたこともあったり、「月光美人」という名前で売られていることもあったり、わたしも月光白のことはイマイチよくわからず正直ちょっと苦手でした。

茶葉は美しいし、おいしくて好きなんですけどね。

画像5

なぜそんなよくわからない事態になっていたかというと、今までは月光白はじめ雲南省産の白茶に対する定義づけがされていなかったから、です。

国家標準『白茶』にも登場していなかったくらいなので、長年割と日陰の存在でした。

画像6

それが今回、団体標準『雲南大葉種白茶』が制定、2021年11月25日から施行されます。内容をざっくりご紹介します。

「雲南大葉種白茶」ポイントは4つ
✔️雲南大葉種を原料として白茶製法で作ったお茶を定義
✔️形状によって散茶、緊圧茶の2種類に分類される(黒茶と同じイメージ)
✔️使用する茶葉の部位によって大きく3つのランクに分かれる(福建の白茶と同じ)
✔️地理、気候、土壌など産地条件も細かく明記されている

<今回発行された標準リンク(中国語)>

T/YNTCA 007-2021 云南大叶种白茶
http://down.foodmate.net/standard/yulan.php?itemid=111647

そもそも「標準」って?

「標準」とは、いわゆる「規格書」のこと。製品の品質が一定以上の水準を維持できるようにするための約束事が書いてあります。

茶葉の場合は、産地、品種、製造方法、評価基準などが記載されています。「国家標準」「地方標準」「業界標準」「団体標準」などがあります。

「団体標準」とは?

中国政府が認定した公的な団体(各茶葉学会など)が制定した規格書のこと。


2017年に「中華人民共和国標準化法」が1988年に制定されて以来初の改定を行い、今後政府は地方政府や民間(業界団体)による標準発行を推進していく旨が明文化されました。

今回ご紹介する団体標準『雲南大葉種白茶』を発布したのは雲南省茶葉流通協会。起草には雲南の茶業関連団体が数多く名を連ねています。

起草人

▲研究所、大学、企業のずらーっと。雲南の白茶に対する業界としての本気度が伺えます

「雲南大葉種白茶」の定義

「雲南大葉種白茶」とは、“雲南大葉種の茶樹の生葉を原料とし、萎凋、乾燥、精製、蒸圧定型乾燥あるいは不蒸圧定型乾燥、包装などの特定の技法で製造された白茶(略称は「雲南白茶」)”とのこと。

ちなみにこの原料となる「雲南大葉種」の定義は“雲南省茶区に分布して栽培されている、各種の喬木型、小喬木型の大葉種茶樹の総称”。国家標準(地理標志産品)『普洱茶』の定義を引用しています。つまり、「雲南大葉種白茶」と「普洱茶」の原料は同じ品種の茶樹を使うよ、ということですね。

▼ 参考(中国語)
地理标志产品 普洱茶 GB/T 22111-2008

「雲南大葉種白茶」の分類

「雲南大葉種白茶」はさらに2つのカテゴリー、4つのタイプに分類できます。まとめるとこんな感じです。

<1:雲南白茶散茶>
蒸圧成型させずに乾燥させるタイプ、いわゆる一般的なリーフティー
(1)雲白毫(うんはくごう)
・原料バランス
単芽90%以上、一芽一葉10%以下

(2)月光白(げっこうはく)
・原料バランス
一級:一芽一葉90%以上、一芽二葉10%以下
二級:一芽二葉90%以上、一芽三葉10%以下

(3)雲寿(うんじゅ)
・原料バランス
一芽二〜三葉70%以上、その他同等レベルの芽葉30%以下

<2:雲南白茶緊圧茶>
蒸圧成型させて円盤形やレンガ状に成形するタイプ
・原料:雲南白茶散茶(雲白毫、月光白、雲寿)

一芽一葉の解説

ここで新たに登場した「雲白毫」はきっと「白毫銀針」を、「雲寿」は「寿眉」を意識したネーミングですよね。分類方法も福建の白茶を参考にして作成されているため、わかりやすいです。

▼ 福建白茶との比較

雲南と福建の白茶比較

トレーサビリティシステムの標準も同時発行

もうひとつ今回の動きの特徴は、雲南大葉種白茶のトレーサビリティシステムに関しても標準を発行しているところ。

T/YNTCA 008-2021 云南大叶种白茶质量保荐追溯技术规范
http://down.foodmate.net/standard/yulan.php?itemid=111646

福建省でも先進的な取り組みが行われていることは以前ご紹介したとおりですが、雲南省でも標準化を進めているというのは注目すべきポイントです。

▼ 参考記事

生産者が集めるべきデータの一覧があったのでずらっと並べてみます。
ここはもうざざざざーーーっと下にスクロールしちゃってください(笑)


▼ トレーサビリティで収集するデータの一覧

6.1 原材料・副資材の調達
原材料・副資材の目録、仕入先名、仕入先の資格証明書、主要な原材料・副資材の第三者検査報告書
6.2 茶園管理と茶葉の収穫
6.2.1 茶園管理

茶園の名称と住所、茶園権利者とその電話番号、茶園証明書または森林権証明書または賃貸借契約書、面積、茶樹の種類、茶園環境、茶園認証の状況など
6.2.2 茶葉の収穫
6.2.2.1 生葉の摘み取り

場所、天気の状況、人員数、実施時間、摘み取り方法、使用道具、摘み取った生葉の量など
6.2.2.2 生葉の輸送
輸送時間、輸送開始・終了場所、輸送道具とその衛生状態、輸送人員、輸送量など
6.3 茶葉の加工
6.3.1 雲南白茶散茶の加工工程

生葉→萎凋→乾燥→精製→包装
6.3.1.1 萎凋
萎凋方法、萎凋設備、温湿度、技術指標(含水率等)、萎凋数量、人員、時間
6.3.1.2 乾燥
乾燥方法、乾燥設備、温湿度、技術指標(含水率等)、人員、時間、数量
6.3.1.3 精製
精製方法、精製設備、人員、時間、数量
6.3.1.4 包装
包装方法、包装機器と材料、製品のバッチ番号毎の数量、包装担当者、時間
6.3.2 雲南白茶緊圧茶の加工工程
雲南白茶散茶→計量→蒸圧成型→乾燥→包装
6.3.2.1 雲南白茶散茶
5.3.1の加工工程で生産された製品
6.3.2.2 計量
計量方法、計量機器、担当者、時間
6.3.2.3 蒸圧成型
蒸圧成型方法、機器、担当者、時間 
6.3.2.4 乾燥
乾燥方法、乾燥機器、気象条件、技術的指標(含水率等)、担当者、時間、数量
6.3.2.5 包装梱包
包装方法、包装設備、素材、製品のバッチ番号毎の数量、包装担当者、時間
6.3.3 保管
保管名、数量、積み上げ場所、保管温度と湿度、衛生条件
6.3.4 輸送
輸送量、時間、輸送元と輸送先の場所、輸送手段、衛生条件、輸送人員、入庫検査
6.3.5 検査と試験
6.3.5.1 出庫検査

サンプリングのベース数量、サンプル量、サンプリング時間、サンプリング担当者と人数、検査機関、検査結果、検査人員、検査時間
6.3.5.2 製品検査
サンプリングのベース数量、サンプル量、サンプリング時間、サンプリング担当者と人数、検査機関、検査結果、検査人員、検査時間
6.3.5.3 包装材料及び付属品、生産用水
サンプル量、サンプリング時間、サンプリング人員、検査人員、検査結果、検査時間
6.3.5.4 製品保管
製品名、製品のバッチ番号、入出庫数、倉庫の温湿度、衛生、環境条件
6.3.5.5 製品評価
評価担当組織、評価方法、担当者、評価結果、時間
6.3.6 流通・販売
6.3.6.1 輸送情報

製品名、数量、カテゴリー、仕様、バッチ番号、輸送手段と衛生状態、所要時間、輸送元・輸送先の場所、輸送担当者、製品の受け渡し状況
6.3.6.2 販売
企業名、法定代理人、連絡先住所と電話番号、販売責任者など

これ本当にやるとしたらものすごい膨大なデータ量になりますよね(笑)ここまで緻密な情報管理を本当に現場レベルに落とし込めるのか…正直未知数なところではあります。

しかしこうして標準化したという点を見ると、本気でトップレベルの品質管理を行い「雲南大葉種白茶」というブランドを守り育てていこうという業界の気概を感じます。

参考:中华人民共和国标准化法(百度百科)

ゆえじの雑感

新たに施行された標準では「雲白毫」「雲寿」などわたしたち日本人にとっては新しい名前も登場しました。

中国のサーチエンジン「百度」で検索をかけてもいまいちヒットしなかったので、おそらく中国国内でもまだほとんど認知されていない状態です。

まずは標準化を通じてこれまで混沌としていた雲南の白茶を再定義することができました。今こそスタート地点に立ったといえるので、これから業界をあげて認知度を高めるための販促・普及活動に力を入れていくものを思われます。

今後この「雲南大葉種白茶」がどのように存在感を高めていくのか楽しみですね。

タイトルとURLをコピーしました