こんにちは、中国茶ライフスタイル文化協会代表理事のゆえじです。
2021年8月22日、福建省の大田県が正式に「中国美人茶の里」と名乗る認証を得た、というニュースがありました。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085101/picture_pc_dd53d8bc814a49572f83811648b8c955.jpeg?width=800)
今回はこの大田県で生産される「大田美人茶」についてご紹介します。
大田美人茶ってなに?
日本ではまだあまり聞きなれないお茶・大田美人茶。2021年8月8日付で大田美人茶の団体標準も発行されています。
T/CSTEA 00027-2021 大田美人茶
標準に記載されている定義はこちら▼
大田美人茶(Datian Beauty Tea)
福建省大田県行政管轄区内の茶園整体環境の中で、茶樹とチャノミドリヒメヨコバイ(通称ウンカ)が共生できる条件下で適切に選定されたカメリア・シネンシス品種の新芽。一芽一葉から一芽二〜三葉の茶葉を原料とし、独自の工程を経て生産された“果(花)香蜜韵”の品質特性を持つ烏龍茶製品。
※果(花)香蜜韵:果物や花のような香りと、蜜のような余韻があること
✔️ポイント
・分類は烏龍茶
・産地を大田県に限定している
・ウンカの存在を明文化している
注目すべきは「ウンカ」です。なんかどっかで聞いたことあるような?
あとは大田美人の「美人」という名前もなにかに似ているような?
大田美人茶のベースとなったお茶
そうです、「美人」といえば有名なのは台湾の烏龍茶・東方美人(とうほうびじん)。
東方美人って名前がいいですよね、オリエンタルビューティー。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69967515/picture_pc_a410eef4a1f3f2f72b694c9bbe8c2d03.jpg?width=800)
▲東方美人の茶葉
確かに茶葉はカラフルでビューティーです。
台湾の桃竹苗エリア(新竹県、苗栗県、桃園県)と文山エリア(新北市坪林区、石碇区など)で生産されています。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70086318/picture_pc_47b9a614c493e936ac2a2ce2233299d4.jpg?width=800)
▲東方美人の水色
紅茶に似たような甘みのある華やかさを持っているのが特徴。
この甘みのある独特の味や香りは「蜜香」と呼ばれ、ウンカという虫が茶葉を噛むことによって発生するものです。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70086043/picture_pc_2998839b79129b967217e745f496ab9d.jpg?width=800)
▲東方美人の茶殻
大田美人茶はこのウンカが茶樹と共生できる環境条件というのを標準で定義しています。これはもう言ってしまえば東方美人製法の烏龍茶、ですよね。
大田県ってどんなとこ?
大田県の特徴をざっくり箇条書きでまとめてみます。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085164/picture_pc_e4b667062c351fd6d379b145e036ca7e.jpeg?width=800)
✔️大田県エリアでのお茶作りの歴史は古く、文献によると南宋の隆興二年(1164年頃)まで遡ることができるとか。当時作られていたのは緑茶で「大仙峰茶」という名で知られていた。
✔️大田県の特徴は、標高の高さ。最高峰・海抜1553mの大仙峰を含め海抜1000m級の山が175座ある。高品質な茶を生産するだけの産地的条件は揃っている。
![大田県の位置2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69967746/picture_pc_d42685d3a47c9f6c76b2610b4043ea56.png?width=800)
▲福建省の省都・福州の西側。安渓県など鉄観音の産地と隣接
![大田県の場所](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/69967718/picture_pc_2343c69f5133a276ed7535382b4514e1.png?width=800)
▲緯度的には台北と同じくらいの位置(青い部分が大田県)
✔️安渓県が鉄観音でブランド産地化に成功したのを受け、大田県も茶業発展を目指す
✔️1990年代末頃、台湾の実業家が大田県で茶業を始める。台湾の茶樹を植え高山茶を作る。同じく台湾の東方美人を模した烏龍茶を生産し、大田美人茶を創出。
大田県が「中国美人茶の里」となった背景
![名称未設定2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085343/picture_pc_37f13203829eb9b38fbcc83a3837bfb0.png?width=800)
なぜ大田県が「中国美人茶の里」に認定されたのか?根拠はいろいろあるみたいですが、一番大きいのは生産量。
大田県における美人茶の生産量は年間約4,000トンで、中国大陸内の美人茶生産量の70%以上を占めています。
また、大田県内の茶園面積の85%が美人茶の品種に適しているため、今後も生産量が増えることが見込まれている、というのも理由の一つ。
現に、大田県も地域を挙げて品質向上、生産効率化、茶文化の普及活動を行っています。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085387/picture_pc_961ff0ec9bce06948f20ff3b5fc60c2a.jpeg?width=800)
▲展示会でのプロモーション活動
![名称未設定](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085445/picture_pc_167cd42f3fc60648bd4a6e36b5321da5.png?width=800)
▲茶畑ツアーの開催
大田美人茶、飲んでみた
2019年、福建省の省都・福州市の観光地「三坊七巷」で大田美人茶のプロモーションイベントが行われていました。
![図1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70084979/picture_pc_434c2071f4a31a746e7059473631924d.jpg?width=800)
▲この時の写真改めて見ると全体的に中国みが溢れてて好き(笑)
私も初めて出会うお茶だったのでこの時はとりあえず上から2番目くらいのランクのものを買いました。お値段は忘れてしまいましたが、そこまで高くはなかったと思います。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085044/picture_pc_14d09b82db2fe2fb30ce31e4868531d5.jpg?width=800)
茶葉の見た目は東方美人と同じ。
香りはほんのり酸味、草っぽい青さ。鼻の奥にほんのり甘みが残る。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085059/picture_pc_46ad39132c8bb7a9f8bb5111280b2d6d.jpg?width=800)
味わいは軽く、さらっとしてる。充実度というかパワーがそこまでない感じで、東方美人のような蜜っぽいコクはありませんでした。ランクが低い茶葉だったからかな。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085070/picture_pc_6e23dc9b5121ef5ea9b37c70f008ef99.jpg?width=800)
ゆえじの雑感
大田県が全国に先駆けて正式に「中国美人茶の里」と名乗ることができるようになりました。
これは、今後中国大陸の他のエリアでも東方美人製法の烏龍茶が作られることを想定したマーケティング戦略といえます。
いろんな「〇〇美人」というお茶が増えてくることも考えられる、ということですね。品質はまだまだ本場台湾の東方美人には及ばない?ような印象ですが、今後が楽しみなお茶のひとつです。
![名称未設定3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70085542/picture_pc_5858f112fd58ab9a1b54fd052ccf8bf2.png?width=800)