【烏龍茶】大紅袍の特徴、産地、歴史・逸話

中国茶の中でも特に有名な烏龍茶。そして日本人の私たちにとって烏龍茶といえばペットボトルの茶色いお茶のイメージ。それはまさに武夷岩茶(ぶいがんちゃ)です。

そんな武夷岩茶を代表する大紅袍について、特徴や産地、歴史・逸話などをまとめています。

大紅袍の特徴

  • 大紅袍(だいこうほう / Da hong pao)
大紅袍 茶葉

伝統的な中国十大銘茶「武夷岩茶」の中でも最高峰(茶中状元)とされる茶。

「岩韻」といわれる岩茶特有の残り香がとても魅力的。大紅袍の母樹は樹齢千年といわれる伝説的な存在で、現在市場に流通しているのはこの母樹から挿し木してDNAを受け継いだ茶木から製造したもの。

ただし実態としては、6株の母樹は品種がそれぞれ異なる奇種(在来種)であるため「大紅袍」という名の品種は存在しない。つまり、大紅袍とはそもそもが複数の品種をブレンドしたものである、というのが現在の一般的な認識となっている。

形状光沢のある黒褐色で強くねじれている
水色艶と深みのある褐色
香りコクと厚みのある馥郁たる香り
「岩韻」は甘みが心地よい際立つ
味わいまろやかでコクがある。
ほのかに香ばしい。後味が長く残る

大紅袍の産地

  • 福建省武夷山市

武夷山の九曲渓の四曲から六曲が伝統的な茶産地。大紅袍の母樹は、武夷山東北部天心岩天心寺西の九龍窠の岩場に現存している(海抜約600m)

本来は、武夷山の海抜400m以上の産地で採れたものを「正岩茶」、海抜400m未満のものは「半岩茶」、九曲渓周辺(海抜200m程)のものは「洲茶」と区別していたが、実際に現地で購入しようとするとホンモノの「正岩茶」を見抜くのは難しい。(「正岩茶」と言えば高く売れるため)

海抜200~450m、最も高い茶区
である三仰峰は729.2m。
多雲霧、亜熱帯気候
年間平均気温18.5~19.9℃
年間平均降雨量1,600~2,000mm
土壌酸性岩石が風化したもの、
有機質や栄養成分が豊富

大紅袍の歴史・逸話

名前の由来は諸説ある。

  • 由来1:春になると芽の色が紫紅色になるため、遠くから見ると茶樹がまるで紅色の衣を着ているように見えることからこの名が付いたという説。
  • 由来2:武夷天心寺にあった茶樹から作った茶を飲んで病が治ったため、感謝の気持ちを込めて紅色の衣を茶樹に纏わせたことから。ちなみに、この説で病になって紅色の衣を纏わせたのは、武夷天心寺の僧侶だったり、科挙の試験を受けようと通りかかった秀才だったり、皇后だったり・・・それこそ諸説いろいろ。その昔、紅色の衣は宮廷の大臣だけが着ることを許された特別なものだとか。

その他様々な伝説も言い伝えられている。

  • 伝説1:大紅袍は人間が登ることができない絶壁の上に野生しているため、昔は僧侶が猿に果物を与えて茶葉を摘みに登らせていたとか。
  • 伝説2:絶壁に生えている大紅袍の茶葉が、風に吹かれて落ちて来るたびに、僧侶が集めてお茶を製造していたとか。
  • 伝説3・大紅袍は山の神が所有している神聖なものとされ、僧侶が毎年元日に線香を立て、少量を仏様に供えていたとか。
  • 毛沢東も好きだったらしい。
  • 以前は、大紅袍の母樹から茶葉を摘む前に、必ず祭壇を設け、線香を立て、礼拝をし、お経をあげていた。製茶の際も、熟練した専門職人の手によって特別な製法で作られ、年間の出来高はたったの400gほど。この貴重な茶葉は福建省と中央政府で分け合って、国賓や政府の要人だけが味わうことができたものだった。しかし、世界遺産に登録されたことをきっかけに保護することを優先し、2006年には母樹の茶葉採取は禁止された。
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